大学院の学費は、在学中の授業料と生活費は本人名義の無利子奨学金、入学前に払う入学料などは親名義の教育ローンという分け方が基本線になります。大学院生が使えるJASSOの第一種奨学金や授業料後払い制度は、審査で見る収入が親ではなく本人と配偶者だからです。
一方、国の教育ローンの申込人は原則として保護者で、学生本人が学業に専念する場合は申込人になれません。社会人として収入がある人が大学院に進む場合は、本人名義の銀行教育ローンも選択肢に入ります。
この記事では、学部生向けの制度との違いを押さえたうえで、名義の決め方と、修士2年分の不足額を奨学金と教育ローンで賄った場合の返済額を比べます。
目次
まず、学部で使えた給付型の支援は大学院では使えません。文部科学省の修学支援新制度Q&Aは「大学院生は対象になりません」と明記しています。学部で給付奨学金や授業料減免を受けていた人も、大学院では支援が切れる前提で資金計画を立て直す必要があります。
その代わり、大学院には学部にない仕組みがあります。同じQ&Aは、大学院生への支援として無利子奨学金の業績優秀者返還免除と授業料後払い制度を挙げています。大学院の授業料減免は、国立大学では運営費交付金などで措置されると説明されています。
| 制度 | 金額(2026年10月時点の公表条件) | 返還 |
|---|---|---|
| 大学の授業料免除 | 大学ごとに異なる | 不要 |
| JASSO第一種(修士相当) | 月5万円または8万8,000円 | 無利子。業績により全額・半額免除あり |
| JASSO第一種(博士相当) | 月8万円または12万2,000円 | 無利子。業績により全額・半額免除あり |
| 授業料後払い制度(修士段階) | 授業料相当額:国公立最大53万5,800円、私立最大77万6,000円(年額)。生活費奨学金月2万円・4万円 | 無利子・所得連動 |
| JASSO第二種(大学院) | 月5万・8万・10万・13万・15万円 | 有利子 |
大学の授業料免除は、国立大学の授業料を定める省令の第13条が、経済的理由で納付が難しい人への免除や猶予の措置を国立大学法人に求めています。基準と申請時期は大学ごとに違うので、合格後すぐに進学先の学生支援窓口で確認してください。
JASSOの第一種奨学金には、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた人の返還を全額または半額免除する制度があります。修士課程と専門職学位課程には進学前後に免除を内定する仕組みもあります。教職大学院などを修了して正規教員になる場合の「教員免除」も設けられています。
授業料後払い制度は、修士課程と専門職学位課程の学生が在学中は授業料を払わず、修了後に所得に応じてJASSOへ返す制度です。年収が300万円程度になるまでは返還月額が2,000円です。第一種奨学金とは併用できず、第二種奨学金とは併用できます。制度の全体像は給付奨学金・授業料後払い制度の解説記事にまとめています。
名義を決める手がかりは、それぞれの制度が誰の収入を審査するかです。ここが学部進学時と最も違う点です。
| 借入れ先 | 名義 | 審査で見る収入・条件 |
|---|---|---|
| JASSO第一種・授業料後払い(大学院) | 学生本人 | 本人と配偶者の住民税情報。修士相当で配偶者がいない給与所得者の目安は年収299万円 |
| JASSO第二種(大学院) | 学生本人 | 同上。修士相当の目安は年収536万円 |
| 国の教育ローン | 保護者(親族も可) | 世帯年収。子1人の世帯で790万円以内など。大学院は1人450万円まで |
| 銀行の教育ローン(三菱UFJ銀行) | 保護者または本人(社会人に限る) | 前年度税込年収200万円以上、勤続1年以上など |
| 銀行の教育ローン(三井住友銀行) | 両親のいずれかまたは本人 | 満20歳以上65歳以下、前年度税込年収200万円以上など |
JASSOの大学院向け奨学金は、親の年収が高くても本人に収入がなければ家計基準を満たしやすい仕組みです。学部時代に親の収入で第一種に届かなかった家庭でも、大学院では申し込める可能性があります。
国の教育ローンは逆に、保護者の世帯年収が上限内であることが条件です。日本政策金融公庫のよくある質問は、学業に専念する学生については返済の見通しが立たないため、主に生計を維持している親や親族に申込人になってもらうよう案内しています。申込人になれるのは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族で、祖父母やおじ・おばも含まれます。
社会人が仕事を続けながら大学院に通う場合は、本人の給与で返済する銀行ローンが現実的です。三菱UFJ銀行のネットDE教育ローンは本人の申込みを社会人に限っており、学業専念の学生は対象外です。社会人向けの選び方は社会人が本人の教育資金に借りられる教育ローンの記事で比べています。
国立大学院の授業料と入学料は省令で標準額が決まっています。大学院の研究科は授業料年53万5,800円、入学料28万2,000円で、法科大学院は授業料年80万4,000円です。各大学は特別な事情があれば標準額の120%までの範囲で定められます。
国立の標準額で修士2年間を計算すると、入学料と授業料で135万3,600円です。このうち入学料は入学を許可するときに納めるのが原則で、進学後に始まる奨学金の振込では間に合わない場合があります。
授業料後払い制度の貸与額ページに載っているのは授業料相当額と生活費奨学金で、入学料の記載はありません。入学料は別に用意する前提で計画し、扱いは進学先の大学院に確認してください。入学前のまとまった支払いだけを親の国の教育ローンや貯蓄で賄い、在学中の授業料と生活費は本人の無利子奨学金に回すと、利息のかかる借入れを最小限にできます。
学部と同じく第一種と第二種の基本は共通です。学部向けの申込手続きはJASSO貸与奨学金の2027年度進学向け記事を参照してください。
仮定として、修士2年間の不足額を120万円とし、本人が第一種奨学金で借りる場合と、親が国の教育ローンで借りる場合を比べます。比較を単純にするため、国の教育ローンは入学時に120万円を一括で借りたものとします。実際の国の教育ローンは今後1年間に必要な費用が対象のため、2年目の分は改めて申し込みます。
| パターン | 在学中の返済 | 修了後の返済 | 利息の合計 |
|---|---|---|---|
| A:本人が第一種(月5万円×24か月、定額返還) | なし | 月約8,333円×144回 | 0円 |
| B:親が国の教育ローン(10年、うち在学2年は利息のみ) | 月4,050円×24回 | 月約14,655円×96回 | 約30.4万円 |
| C:親が国の教育ローン(10年、据置なし) | 月約12,178円×120回 | 約26.1万円 | |
Aは、JASSOの返還年数算出表で貸与総額110万円超130万円以下の割賦金の基礎額が10万円なので、120万円÷10万円=12年(144回)になります。月額は120万円÷144回で約8,333円です。機関保証を選んだ場合の保証料は毎月の振込額から差し引かれるため、この返還額には含めていません。
BとCは、国の教育ローンの金利を令和8年7月1日現在の年4.05%(固定)とし、元利均等返済で計算しました。式は「毎月返済額=借入額×月利×(1+月利)^回数÷((1+月利)^回数−1)、月利=年利÷12」です。保証基金の保証料は含めていません。実際には借入日の金利が適用されます。
無利子のAは利息がかからないうえ、業績優秀者免除に認定されれば返す額が半分または0円になります。大学院で第一種を使える見込みがあるなら、親のローンより先に検討する価値があります。Bの在学中の返済は利息だけですが、そのぶん総返済額はCより約4万円多くなります。
第一は、JASSOの業績免除の申請時期です。申請は貸与が終わった月が属する年度に行う必要があり、機会を逃すと申請できないとJASSOは注意しています。長期履修制度を使う人は、修了と貸与終了の時期を大学に相談してください。
第二は、国の教育ローンの限度額の数え方です。大学院の450万円は子ども1人あたりの上限で、日本政策金融公庫のよくある質問によると、2回目以降は残高を差し引いた額までしか借りられません。学部時代の借入れが残っている家庭は、大学院で借りられる額が450万円より少なくなります。
第三は、博士課程へ進む可能性です。授業料後払い制度のチラシは、博士課程相当に進学した場合などに返還期限猶予を利用できると説明しています。修士で親名義のローンを組むと、本人が博士課程に進んでも親の返済は止まりません。進学年数が延びる可能性がある人ほど、在学中の返還が猶予される本人名義の奨学金を優先する理由があります。
第四に、学生本人が民間の高金利ローンで学費を補うのは避けてください。本人名義で借りられる条件は学生本人が利用できる教育ローンの記事で確認できます。
| 支払い方法 | 名義 | 大学院での主な条件 | 向いている支払い |
|---|---|---|---|
| JASSO第一種・授業料後払い | 本人 | 無利子。審査は本人と配偶者の収入 | 在学中の授業料・生活費 |
| 国の教育ローン | 保護者・親族 | 年4.05%固定(令和8年7月1日現在)。1人450万円まで、残高を含む | 入学料など入学前の支払い |
| 銀行の教育ローン | 保護者または社会人の本人 | 変動金利が中心。三菱UFJ銀行は年4.975%(2026年10月1日現在、保証料込) | 社会人の本人負担、世帯年収が国の上限を超える場合 |
| 学校提携ローン | 主に保護者 | 大学院が提携する場合のみ。条件は提携先ごとに異なる | 学校指定の納付方法に合わせたい場合 |
国の教育ローンは世帯年収に上限があり、銀行の教育ローンは金利や据置の有無が商品ごとに違います。親名義で借りる分は、複数の金融機関の条件を並べてから決めると、在学中の負担と総返済額の両方を比べやすくなります。
親名義または社会人の本人名義で銀行の教育ローンを検討する場合は、CrowdLoanで複数の金融機関のローンを比較して検討できます。奨学金と授業料免除で足りない分の金額を決めてから使うと、借りすぎを防げます。審査は各金融機関が行い、借入れの可否や金利を約束するものではありません。
調査日:2026年10月8日。制度・金利・限度額は調査日時点の公表情報です。2027年度の条件は未公表のため、申込前に各機関の最新情報を確認してください。
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