大学や専門学校の入学を辞退したとき、入学金は原則として戻らず、授業料などは3月31日までに辞退を申し出れば戻るのが基本の線引きです。2006年(平成18年)11月27日の最高裁判決と、文部科学省の通知が根拠です。ただし、実際の返還の可否と手続きは、学校の募集要項や学則で決まるため、納入する前に確認が必要です。
注意したいのは、3月31日までに、学校の定める方法で辞退を申し出ないと、授業料などが戻らなくなる点です。南山大学の2027年度入学者向けの案内では、返還を受けるには、本人と保証人連名の所定の書式を3月31日(必着)までに出す必要があります。さらに、令和7年6月に、文部科学省が私立大学に、入学しない学生の入学料の負担を軽くするよう、努める要請を出しました。入学金を返す大学や、納付時期を遅らせる大学が出ています。
この記事では、判決と通知の内容、国立・私立・専門学校の公式記載、併願で二重に払う場合の試算を整理します。入学金の返還制度を設けるかどうかは大学ごとに違うため、志望校の最新の募集要項で確認してください。
目次
最高裁判所第二小法廷は、平成18年11月27日に、学納金の返還を求めた事件で判決を出しました。判決は、入学金について、額が不相当に高いなどの特段の事情がない限り、学生が大学に入学できる地位を取得するための対価としての性質を持つとしました。入学金は、納めた時点で対価が提供されたと考えるため、その後に辞退しても、大学は返還する義務を負いません。授業料などは、3月31日までに辞退した場合は、原則として、大学は返還する義務を負うとされました。
文部科学省は、同年12月28日付の通知(18文科高第536号)で、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校、各種学校に向けて、3月31日までに入学辞退の意思表示をした人には、原則として、納付した授業料等と諸会費等の返還に応じることを明確にするよう求めました。ただし、専願や推薦入学試験に合格して在学契約を結んだ人は、代わりの入学者を容易に確保できる時期を過ぎているなどの特段の事情がない限り、返還に応じる義務はないという整理です。4月1日以降の辞退は、原則として返還の義務はないとされています。
消費者庁の消費者契約法の逐条解説は、この判決を、同法9条1号(解除に伴う損害賠償額の予定・違約金が、事業者に生じる平均的な損害を超える部分は無効)の適用場面として紹介しています。3月31日までの解除では、大学に生じる平均的な損害は原則として存在せず、不返還の特約はすべて無効になります。4月1日以降は、初年度に納付すべき範囲内であれば、不返還の特約は有効とされています。
学校の種類で、授業料の払い方と返還の規定が違います。国立大学は、授業料を口座引落で払う例があります。横浜国立大学は、2026年度の春学期分の授業料の引落を6月12日と案内しており、3月の時点では授業料を払っていないため、授業料の返還は通常、問題になりません。入学料は282,000円(現行)で、愛媛大学の入学辞退願の様式には、入学手続の期間が終わった後に辞退する場合、入学料が返還されないことを承知しているという一文があります。
| 学校 | 入学金(入学料) | 授業料など | 手続き・期限 |
|---|---|---|---|
| 国立大学(北海道大学の通則) | 還付しない | 入学許可時に授業料を納めた人が3月31日までに辞退した場合は、その授業料に相当する額を還付 | 通則に規定 |
| 南山大学(2027年度入学者) | 原則返還しない | 入学金以外の授業料および教育充実費等を返還 | 2027年3月31日(水)必着で、本人と保証人連名の所定書式 |
| 目白大学(2027年度入学者) | 返還しない | 2027年3月31日(水)必着で文書による申出に限り、入学金を除く学納金を返還 | 4月1日以降の申出は入学金・学納金とも返還しない |
| ECC国際外語専門学校 | 返還しない(併願返金制度あり) | 2027年3月31日以前の辞退で、入学金を除く学費を返還 | 4月1日以降は、納入済みの1年分の学費を原則返還しない |
| 日本ウェルネスAI・IT・保育専門学校 | 返金できない | 3月31日までの辞退で授業料と施設維持費を返金 | 4月1日以降は一切返金できない |
表のとおり、共通しているのは、3月31日が境目になっている点です。ただし、専門学校は、入学金のほかに、併願の返金制度を持つ学校があります。ECC国際外語専門学校は、大学、短大、大学院、就職に進路が決まった場合に入学金を全額返金する制度を案内しています。同じ専門学校でも、年度と学校で規定が違うため、募集要項のうち、返還の項目を必ず読んでください。国立大学の規定は北海道大学の通則と愛媛大学の様式を例にしたものなので、志望校の募集要項と学則で確かめてください。
国立大学を第一志望に、私立大学を併願して、先に手続き金を納める場合を試算します。南山大学の2027年度入学者の案内で、人文・外国語・経済・経営・法・総合政策・国際教養の1年次の入学手続時納入金は、合計747,800円です。内訳は、入学金200,000円、授業料(半年分)410,000円、教育充実費(半年分)120,000円、そのほか17,800円です。3月31日までに所定の方法で辞退すれば、入学金以外の納入金(747,800円−200,000円=547,800円)が、返還の対象になります。
| 辞退の時期(南山大学の例) | 先に納めた額 | 戻る額 | 戻らない額 |
|---|---|---|---|
| 3月31日までに所定の方法で辞退 | 747,800円 | 547,800円 | 200,000円(入学金) |
| 4月1日以降に辞退 | 747,800円 | 規定上は返還なし | 747,800円 |
| 3月31日までに申出をしなかった場合 | 747,800円 | 返還を受けられない可能性 | 最大747,800円 |
国立大学の入学料282,000円を加えると、手元から一度に出ていく額は、282,000円+747,800円=1,029,800円です。私立の返還は、申請の後に振り込まれる形です。返還までの間は、約55万円を一時的に立て替える形になります。返還の時期は、学校の案内で確認してください。金額は一例で、学部や年度で変わります。学納金の返還は、辞退した後に振込を待つ形で、納めた日からすぐに戻るわけではありません。資金の立替えと、返還までの期間を、先に見積もっておくと、慌てません。
入学金の負担軽減は、文部科学省のQ&A(令和8年3月13日更新)で、辞退の時期によって全部または一部を返す、納付時期を複数回に分ける、納付期限を後ろへ遅らせるといった例が示されています。募集要項に入学料は返還しないと書いてあっても、負担を軽くする追加の対応は、志願者に不利益な変更にはあたらないとされています。そのため、志望校の公式サイトで、最新の取扱いを確認してください。
| 状況 | 確認すること | 備え |
|---|---|---|
| 国立大学が第一志望で、私立を併願 | 私立の入学手続の期限と、国立の発表日 | 返還までの立替資金と、入学金の返還制度の有無 |
| 専願・推薦で合格 | 在学契約の成立と、返還の特約 | 辞退の可否と手続きを募集要項で確認 |
| 3月31日が近い | 辞退の申出の方法(書式、必着、保証人の署名) | 期限の前日に着くように郵送 |
| 専門学校に併願 | 入学金の返金制度、学費の返還規定 | 進路が決まった証明書類 |
| 資金が足りない | 延納・分納の制度、教育ローンの申込時期 | 返還までの立替を計算 |
学費の延納や分納は、大学の授業料の延納・分納の記事で、合格発表の後に教育ローンを申し込む時期は、教育ローンの申込時期の記事で確認できます。
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調査日:2026年10月11日。返還の可否と手続きは、学校の募集要項や学則で決まります。2027年度入試で各大学が入学金の返還制度を設けるかは大学ごとに異なり、網羅できていません。志望校の最新の募集要項で確認してください。
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