看護師や介護福祉士の養成課程、専門職大学院、認定IT講座などを社会人が受けるとき、雇用保険から受講費用の一部が戻るのが「専門実践教育訓練給付金」です。2026年10月8日時点の厚生労働省とハローワークの案内では、給付率は最大80%です。ただし80%になるのは、修了後の資格取得・就職と賃金上昇の条件をすべて満たした場合に限られます。
取り逃がしやすいのは、金額よりも手続きの順番です。受講を始める前にハローワークで受給資格確認を済ませる必要があり、期限は原則として受講開始日の2週間前です。要件、給付率、期限、立替え期間を順に整理します。
目次
在職中の人は、受講開始日に雇用保険の被保険者で、支給要件期間が3年以上あることが条件です。初めて教育訓練給付金を受ける人は、当分の間、2年以上で対象になります。
離職中の人は、離職日の翌日から受講開始日までが1年以内であることが必要です。妊娠、出産、育児、病気などで30日以上受講を始められない場合は、申し出によりこの期間を最大20年以内まで延ばせます。
2回目以降の人は注意点が2つあります。前回の受講開始日より前の加入期間は通算されないため、前回の受講開始日以降で3年以上の加入期間が必要です。また、前回の給付金の支給日から今回の受講開始日の前日まで、3年以上空いている必要があります。
受講開始日は、通学制なら講座の開講日、通信制なら教材の発送日です。加入期間が足りるか分からない人は、ハローワークに「教育訓練給付金支給要件照会票」を出すと、文書で回答が届きます。
受講中は6か月ごとに教育訓練経費の50%が支給され、修了後に条件を満たすと70%や80%との差額が追加されます。
| 段階 | 条件 | 給付率(年間上限) |
|---|---|---|
| 基本 | 受講中・修了 | 50%(40万円) |
| 資格取得・就職 | 修了後原則1年以内に目標の資格を取得し、雇用保険の被保険者として就職(在職者は資格取得) | 70%(56万円) |
| 賃金上昇 | 上の条件に加え、修了後の賃金が受講開始前より5%以上上昇。2024年10月1日以降の受講開始に限る | 80%(64万円) |
対象になる教育訓練経費は、講座の実施者に払った入学料と受講料だけです。検定試験の受験料、必須でない教材費、交通費、パソコン代、クレジット会社への手数料は含まれません。会社の補助分は差し引いて申請します。
70%の条件にも細かい定めがあります。看護師のように登録や免許が必要な資格は、試験に合格しただけでは「取得」になりません。雇用保険に入らない公務員として就職した場合は、追加給付の対象外です。目標の資格がない大学院などの講座は、修了や学位取得で判断されます。
複数回受講する場合、最初に給付を受けた講座の受講開始日から10年間の合計は192万円が上限です。
厚労省のパンフレットの例で計算します。仮に、訓練期間2年、入学料10万円、6か月ごとの受講料40万円の講座を受けるとします。教育訓練経費は10万円+40万円×4期=170万円です。
50%の部分は、第1期(入学料込み50万円)が25万円です。第2期は40万円の50%で20万円ですが、1年目の上限40万円を超えるため15万円になります。第3期と第4期は20万円ずつです。50%部分の合計は80万円です。
資格取得と就職の条件を満たすと、20%分として170万円×20%=34万円が計算されます。ただし上限は年16万円×2年=32万円なので、追加は32万円です。さらに賃金が5%以上上がると、10%分の17万円が、上限の年8万円×2年=16万円に抑えられます。
すべての条件を満たした場合の合計は80万円+32万円+16万円=128万円で、170万円に対する割合は約75%です。年間上限があるため、受講料が高いと80%には届きません。一方、仮に資格が取れなかった場合や、修了後1年以内に就職しなかった場合、受け取れるのは50%部分の80万円で、自己負担は90万円です。
給付金を受けるには、受講を始める前に2つの手続きが必要です。まず、訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、ジョブ・カードを作ります。ハローワークなどで予約制で受けられ、オンラインにも対応しています。
次に、ジョブ・カードと「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」、本人確認書類、写真などを、住所を管轄するハローワークに出して受給資格確認を受けます。期限は原則として受講開始日の2週間前までです。郵送なら2週間前までの消印が必要です。ジョブ・カードは発行から1年以内のものに限られます。
2026年10月8日時点の厚労省とハローワークの案内には、この手続きを受講開始後にさかのぼって行える扱いは見当たりませんでした。受給資格確認は講座の申込み前でもできるので、講座を決めたらすぐキャリアコンサルティングを予約すると確実です。日程が間に合うか不安な場合は、申込み前にハローワークへ相談してください。
講座は、厚労省の「教育訓練講座検索システム」で講座名や資格名から探せます。給付の対象になるのは講座の指定期間中に受講を始めた場合だけなので、講座詳細の「指定期間」も確認します。「申請期限が迫っている」「先に給付金がもらえる」といった勧誘について、厚労省は不適正な例として注意を呼びかけています。
給付金は後払いです。申請は、受講開始日から6か月ごとの期間が終わった翌日から1か月以内に行います。たとえば4月1日に受講を始めた場合、最初の申請期間は10月1日から10月31日です。修了した期は、修了日の翌日から1か月以内に申請します。
つまり入学料と最初の半年分の受講料は、いったん全額を自分で払っておく必要があります。申請時点で未納の額は経費に含まれないため、払い終えてから申請します。領収書は講座の実施者が発行したものに限られ、販売代理店の領収書は認められません。
70%への追加分は、資格取得日と就職日のいずれか遅い日から1か月以内に申請します。80%への追加分は、就職した日の翌日から6か月を過ぎた日から6か月以内です。受講前後の賃金を示す書類と事業主の証明が必要です。
離職中に昼間通学制の講座を受ける人は、「教育訓練支援給付金」の対象になる可能性があります。支給額は雇用保険の基本手当日額の60%で、原則2か月に1回の認定日に失業の認定を受けて支給されます。
主な条件は、受講開始時に45歳未満であること、通信制や夜間制でないこと、初めて教育訓練給付金を受けることです。基本手当を受けられる期間中は支給されません。在職中に受講を始めて途中で離職した場合も対象外です。2か月の出席率が8割を下回ると、以後は支給されなくなります。
この制度は暫定措置で、受講開始日が2027年3月31日以前であることが条件です。2027年4月以降に始まる講座の扱いは、2026年10月8日時点で公表を確認できませんでした。
立替え期間の資金や、給付の対象外になる教材費・交通費が足りない場合に限って、教育ローンを検討します。日本政策金融公庫の国の教育ローンは専修学校や大学院なども対象で、金利は年4.05%(固定、令和8年7月1日現在)です。ひとり親家庭や世帯年収200万円以内の方などは0.4%低くなります。金利は見直されることがあり、審査があります。
公庫のよくある質問では、安定した収入があり独立して生計を立てている社会人は本人が申し込めます。学業専念で収入が大きく減る場合は、親族が申込人になるよう求めています。制度の詳細は国の教育ローンの解説記事をご覧ください。民間の教育ローンは金利や対象講座が金融機関ごとに違うため、複数を比べて選んでください。
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