補聴器の価格は機種によって大きく違い、国内メーカーのリオンは自社製品を片耳3万2千円から60万8千円までと案内しています。両耳では2倍近くになることもあります。負担を減らす方法は3つあり、どれを使えるかは聴力と手帳の有無で分かれます。身体障害者手帳(聴覚障害)を持つ人は障害者総合支援法の補装具費、手帳の対象外の人は自治体独自の購入費助成(ある自治体のみ)、そして条件を満たせば医療費控除です。
医療費控除を受けるには、補聴器相談医が発行する「補聴器適合に関する診療情報提供書」で、補聴器が診療等のために直接必要だと証明されていることが条件です。購入より先に受診するのが原則で、自治体の助成も多くが補聴器相談医の証明や診断を求めています。
この記事では、リオンが公表している価格、国税庁と厚生労働省の資料、横浜市と十和田市(青森県)の助成制度をもとに、親の補聴器を買う前に確認する順番と、自己負担の計算例を示します。助成の条件は自治体ごとに違うので、例として読んでください。補聴器が必要かどうか、どの機種が合うかは、医師と専門の販売店が判断することです。
目次
価格の目安として、メーカーが公表している希望小売価格を見ます。リオン(リオネット補聴器)は公式サイトのQ&Aで「片耳価格で3万2千円から60万8千円までの製品をご用意し」ていると案内しています。形(耳かけ型・耳あな型)や機能によって価格の幅が大きいということです。
両耳で買うと片耳のちょうど2倍になるとは限りません。リオンが2023年8月に発表した充電式の耳あな型オーダーメイド補聴器「リオネット2」では、両耳価格が片耳価格の2倍より低く設定されていました。
リオネット2(耳あな型オーダーメイド・充電式)の希望小売価格(2023年8月発表時、非課税)
| 型番 | 片耳 | 両耳 | 片耳×2との差 |
|---|---|---|---|
| HI-C7DA | 560,000円 | 952,000円 | 168,000円低い |
| HI-C7DB | 430,000円 | 731,000円 | 129,000円低い |
| HI-C7DC | 320,000円 | 544,000円 | 96,000円低い |
| HI-C7DD | 250,000円 | 425,000円 | 75,000円低い |
出典:充電式耳あな型オーダーメイド補聴器「リオネット2」を発売(リオン株式会社、2023年8月9日発表)、リオネット補聴器 公式サイト(2026年10月15日確認)。「片耳×2との差」は編集部で計算
この表は発売時の発表資料の価格で、現在の店頭価格とは異なる場合があります。リオンの製品ページでは、2026年10月15日時点で個別製品の価格を確認できませんでした。実際の価格は販売店の見積もりで確認してください。見積もりでは、本体価格のほか、調整(フィッティング)の回数、保証期間、電池・充電器の費用が含まれているかを見比べると、店ごとの違いが分かります。リオンの製品ページには、無料修理や紛失補償などの保証の内容も載っています。
なお、横浜市の助成は「管理医療機器の補聴器」を対象とし、「医療機器認定を受けていない集音器は助成対象外」と明記しています。通販などで安く売られている集音器は補聴器とは別の製品なので、助成や医療費控除を考えるなら補聴器であることを確認してください。
補聴器の費用を減らす制度は、対象者がはっきり分かれています。最初に確認するのは、身体障害者手帳(聴覚障害)の対象になるかどうかです。
補聴器の購入で使える主な制度
| 制度 | 対象になる人 | 負担の軽くなり方 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 補装具費(障害者総合支援法) | 身体障害者手帳(聴覚障害)を持つ人など | 原則1割負担。月額の負担上限あり | 市区町村 |
| 自治体独自の購入費助成 | 手帳の対象にならない軽度・中等度の難聴の人など(自治体が定める) | 上限額までの助成(例:横浜市2万円、十和田市最大3万円) | 実施している市区町村 |
| 医療費控除(所得税) | 補聴器相談医の診療情報提供書がある人 | 確定申告で所得から控除 | 税務署(確定申告) |
出典:補装具費支給制度の概要(厚生労働省)、横浜市記者発表資料(2026年5月25日)、十和田市 補聴器購入費助成のチラシ、国税庁 個人課税課情報 第3号(平成30年4月16日)(2026年10月15日確認)
横浜市と十和田市の助成は、どちらも身体障害者手帳(聴覚障害)の対象にならない人を対象にしています。手帳の対象になる人は補装具費、ならない人は自治体の助成という分かれ方です。医療費控除は、どちらの場合でも条件を満たせば別に検討できます。
身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)では、聴覚障害の等級は2級・3級・4級・6級です。もっとも軽い6級は「両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)」または「一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの」です。
身体障害者障害程度等級表の聴覚障害
| 等級 | 聴覚障害の基準 |
|---|---|
| 2級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう) |
| 3級 | 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの) |
| 4級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ80デシベル以上のもの、または両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの |
| 6級 | 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの、または一側耳が90デシベル以上・他側耳が50デシベル以上のもの |
出典:身体障害者障害程度等級表(厚生労働省)(2026年10月15日確認)
聴力レベルは医療機関の検査で測るものです。数値だけで自己判断せず、耳鼻咽喉科で相談し、手帳の申請方法は市区町村の窓口で確認してください。
厚生労働省によると、補装具費の利用者負担は原則として定率1割です。所得に応じた負担上限月額があり、生活保護世帯と市町村民税非課税世帯は0円、課税世帯は37,200円です。ただし、世帯の中で市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合は、補装具費の支給対象外になります。
申請は市町村長に行い、身体障害者更生相談所などの判定を経て支給が決まります。支払いの方法は、いったん全額を払って後から支給を受ける「償還払い」と、自己負担分だけを業者に払う「代理受領」の2つです。どちらも、低所得世帯は利用者負担の減免申請ができると案内されています。購入した後に申請しても対象にならない場合があるので、購入前に市区町村の窓口へ相談してください。
補装具費の対象になる機種や、支給される額の範囲は、市区町村の判定で決まります。希望する機種が対象になるかは、購入前に窓口で確認してください。リオンは公式サイトに「障害者総合支援法対応」の製品シリーズのページを設けています。
加齢による軽度・中等度の難聴で手帳の対象にならない人向けに、独自の助成をしている自治体があります。島根県や滋賀県のページも、詳細は住んでいる市町村の窓口で確認するよう案内しています。ここでは条件が公開されている2つの市を例に挙げます。
自治体の補聴器購入費助成の例
| 項目 | 横浜市(令和8年度) | 十和田市(青森県) |
|---|---|---|
| 年齢 | 50歳以上(今年度50歳になる人を含む) | 満65歳以上 |
| 聴力 | 両耳30デシベル以上(両耳とも70デシベル以上は対象外)。30デシベル未満でも補聴器相談医が必要と判断した場合を含む | 両耳30デシベル以上70デシベル未満 |
| 手帳 | 身体障害者手帳(聴覚障害)を交付されていない、または交付対象でない | 身体障害者手帳(聴覚障害)の対象にならない |
| 所得など | 市民税非課税世帯(生活保護世帯を含む) | 世帯に市税の滞納者がいない |
| 医師の関与 | 購入前に補聴器相談医の医師意見書 | 補聴器相談医の診断と「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」 |
| 助成額 | 上限2万円(購入費と2万円の少ない方)。片耳・両耳を問わない | 最大3万円 |
| その他 | 2026年6月22日~2027年2月26日必着、先着300人。2026年4月1日より前の購入は対象外。申請は1度のみ | 認定補聴器専門店等の見積書が必要。過去5年以内に助成を受けていないこと |
出典:横浜市記者発表資料・補聴器購入費助成事業のご案内(2026年5月25日)、十和田市 加齢による難聴にお悩みの方に補聴器購入費を助成します(2026年10月15日確認)
2つの市を比べると、年齢・所得・助成額のどれもが違います。横浜市は市民税非課税世帯に限り、十和田市は所得の条件の代わりに市税の滞納がないことを求めています。親が住んでいる自治体の制度を、子どもの住所地ではなく親の住民票がある自治体で調べてください。
手続きの順番にも注意が必要です。横浜市は「補聴器購入前に補聴器相談医へ相談したことが確認できない場合は、助成の対象となりません」としています。十和田市は、受診、認定補聴器専門店での見積もり、市への申請、交付決定の後に購入する流れで、購入時には助成額を差し引いた額を店に払います。先に買ってしまうと助成を受けられないことがあります。
国税庁のタックスアンサーは、医療費控除の対象になる費用の例に「義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用」を挙げています。ただし、医師による診療や治療などのために直接必要なものに限られます。
補聴器の取扱いは、国税庁の個人課税課情報(平成30年4月16日)で示されています。滋賀県のページはその内容を、補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書」で「補聴器が診療等のために直接必要である旨を証明している場合には、当該補聴器の購入費用(一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額に限る)は、医療費控除の対象になる」と紹介しています。補聴器相談医は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が委嘱した耳鼻咽喉科の医師です。
控除の対象は「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」に限られています。高額な機種の全額が必ず対象になるわけではありません。高額な機種を選ぶ場合は、税務署に確認してください。
国税庁によると、医療費控除の額は「実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円」です。総所得金額等が200万円未満の人は、10万円の代わりに総所得金額等の5%を引きます。控除額の上限は200万円です。対象はその年の1月1日から12月31日までに支払った医療費で、本人だけでなく生計を一にする親族のために払った分も含められます。
親と生計を一にしている子どもが親の補聴器代を払った場合は、子どもの医療費控除に含められる可能性があります。自治体の助成金や補装具費を受け取った場合に、それを「補填される金額」として差し引くかどうかは、国税庁のタックスアンサーでは確認できませんでした。申告前に税務署に確認してください。
次の試算は、表のHI-C7DDの両耳価格(発売時)を例にした仮定の計算です。その年にほかの医療費が5万円あり、保険金などで補填される金額はないものとします。
医療費控除の試算(編集部による仮定の計算)
| ケース | 計算 | 医療費控除額 | 所得税の軽減額の目安 |
|---|---|---|---|
| 総所得金額等が200万円以上、所得税率10% | (425,000円+50,000円)-100,000円 | 375,000円 | 375,000円×10%=37,500円 |
| 総所得金額等が150万円、所得税率5% | (425,000円+50,000円)-(150万円×5%=75,000円) | 400,000円 | 400,000円×5%=20,000円 |
出典:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(国税庁)の計算式をもとに編集部で試算(2026年10月15日確認)。復興特別所得税と住民税は含めていません
医療費控除は所得から差し引く仕組みなので、戻ってくる税金は「控除額×税率」です。購入費そのものが戻るわけではありません。所得税がかかっていない人は、控除しても所得税は戻りません。年金収入だけの親の場合、親本人の申告では効果が小さいこともあるので、誰が払い、誰が申告するかを家族で決めておくとよいでしょう。
ここまでの内容をまとめると、親の補聴器を買うときは次の順番で進めると、使える制度を取りこぼしにくくなります。
まず、親の住所地の市区町村に、補聴器の助成制度があるかと、身体障害者手帳の対象になりうるかを問い合わせます。次に、補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科を受診し、補聴器が必要かどうかの診断と、医療費控除や助成に使う書類(診療情報提供書や医師意見書)を依頼します。そのうえで、認定補聴器専門店などで試聴・調整をしてもらい、見積もりを取ります。助成を使う場合は、申請と交付決定を待ってから購入します。最後に、領収書と診療情報提供書の写しを保管し、翌年の確定申告で医療費控除を申告します。
横浜市の案内は、補聴器に慣れて日常的に使えるようになるまで3か月ほどかかるとし、購入後3か月を目安に補聴器相談医を受診するよう勧めています。購入後の調整の回数や費用も、見積もりの段階で確認しておくと安心です。
助成の上限は横浜市で2万円、十和田市で最大3万円です。両耳で数十万円の機種を選ぶと、助成を受けても多くが自己負担になります。補装具費の対象外となる高額な機種を選ぶ場合も同じです。
支払い方法には、現金一括のほか、販売店の分割払い、クレジットカードの分割払い、医療ローン・フリーローンがあります。分割払いやローンは、金利・手数料によって総支払額が本体価格より増えます。例えば425,000円を年8%で3年(36回)の元利均等返済にすると、毎月の返済は約13,318円、総支払額は約479,440円で、利息は約54,440円です(編集部の試算。計算式は 425,000×(0.08÷12)÷{1-(1+0.08÷12)^-36}。保証料・手数料は含まない)。金利は申込先と審査結果で変わるので、この数字は比較のための例にすぎません。
分割払いやローンを使う場合の医療費控除の扱い(どの年の医療費になるか、利息を含められるか)は、この記事では確認できていません。申告前に税務署に確認してください。
国税庁によると、医療費控除の対象は、自分または自分と生計を一にする配偶者その他の親族のために払った医療費です。親と生計を一にしている子どもが払ったのであれば、子どもの申告に含められる可能性があります。補聴器相談医の診療情報提供書など、補聴器の取扱いの条件を満たしていることも必要です。生計を一にしているかの判断に迷う場合は税務署に確認してください。
国税庁の取扱いは、補聴器相談医が補聴器が診療等のために直接必要であることを証明している場合を対象にしています。自治体の助成でも、横浜市は購入前に補聴器相談医へ相談したことを条件にしています。購入後の扱いは確実ではないので、購入前に受診してください。
横浜市は「片耳分・両耳分問わず、最大2万円」と回答しており、2台分にはなりません。ほかの自治体の扱いは、それぞれの要綱で確認してください。
横浜市の助成は、管理医療機器の補聴器だけが対象で、医療機器認定を受けていない集音器は対象外です。医療費控除も、補聴器相談医が補聴器の必要性を証明する仕組みなので、集音器を買う前に医師に相談してください。
横浜市と十和田市の助成は、身体障害者手帳(聴覚障害)の対象にならない人を対象にしています。手帳の対象になる人は補装具費の制度を使うことになります。横浜市は、市のほかの助成で補聴器の購入費の支給を受けていないことも条件にしています。
補聴器の費用は、まず補装具費や自治体の助成、医療費控除で減らせるかを確かめ、それでも残る自己負担分の払い方を決めるのが順番です。両耳を一度にそろえる場合や、助成の対象外になった場合は、販売店の分割払いとローンの総支払額を比べてください。
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本記事は費用と公的制度についての一般的な情報であり、診断・治療の助言ではありません。治療や器具の適応は医療機関に、給付・助成・税制の適用は保険者・自治体・税務署などの窓口にご確認ください。
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