2024年01月31日
中高年の膝の痛みの原因の多くは変形性膝関節症で、階段の昇り降りや歩行が困難になるなど生活の質の低下をもたらします。変形性膝関節症の治療は症状の進行に応じて保存療法から手術療法に移行するのが一般的ですが、近年は再生医療を取り入れる方も増えています。今回は、変形性膝関節症の治療の流れのほか、手術の種類ごとの費用相場も解説。再生医療や治療費用を抑える制度なども紹介します。
目次
「変形性膝関節症」は膝関節の軟骨が摩耗によって変形し、炎症が起こる慢性の関節疾患です。一般的に加齢のほか、肥満、重労働、激しいスポーツなどの要因が重なることで発症し、50歳代以上の男女、特に女性に多く、40歳代から徐々に増加します。
膝には関節軟骨や半月板といった複数の軟骨があり、衝撃を吸収したり膝の動きをスムーズにする役割を担っています。この軟骨がすり減ることで痛みや腫れ、関節の動きの制限などが発生し、進行すると日常生活に支障をきたします。
軟骨は一度すり減ると自然には元に戻らないため、膝に痛みを感じたら早めに受診することが大切です。
変形性膝関節症を治療せず放置しておくと、歩行や正座、しゃがみ込みなどの動作が困難になり、日常生活に支障が出たり生活の質が損なわれます。しかし、すぐさま手術が必要なケースは少なく、まずはリハビリや薬物などによる保存療法を実施します。
保存療法で効果が得られなかったり症状が進行した場合には、手術療法に移行します。しかし、最近では再生医療を提供するクリニックも増えつつあり、第三の治療法として注目を集めています。
変形性膝関節症の保存療法には健康保険が適用されるため、費用は1回あたり数百~数千円程度です。治療内容や処方される薬により費用は異なりますが、定期的な通院が必要なため1回あたりは安くても年間では高額になる場合もあります。
ここでは初診時にかかる費用と、高額になりがちなヒアルロン酸注射費用について解説します。
検査や治療の内容にもよりますが、膝の痛みで初めて整形外科を受診した場合の費用は3割負担で2,000~5,000円程度です。初診時には主に次のような費用がかかります。
まずはレントゲン撮影により、骨の形状などから軟骨のすり減り具合などを確認します。また、必要に応じてMRI撮影や、水が溜まっている場合は関節液検査をおこなう場合もあります。
関節の動きが悪くなっていたり筋力が低下している場合はリハビリテーションを実施し、痛みを緩和したり症状が進行するのを防ぎます。また、痛みや症状に応じて飲み薬や貼り薬を処方したり、ヒアルロン酸やステロイド等の注射、膝の水を抜くなどの処置をおこなう場合もあります。
ヒアルロン酸はもともと関節内に存在する成分で、関節を滑らかに動かすための潤滑油と衝撃を受け止めるクッションとしての役割があります。膝へのヒアルロン酸注射は、痛みの緩和や関節を動かしやすくする効果が期待でき、初期の変形性膝関節症であれば症状がなくなる場合もあります。
週1回までは保険適用で実施でき、両膝への注射は1回あたり3割負担で3,000円が目安です。一般的にはまず1週間ごとに5回注射するため、1ヵ月の治療費は注射代だけで15,000円程度かかります。また、ヒアルロン酸注射の効果が期待できるのは1週間〜2週間程度のため、効果を維持するには定期的なヒアルロン酸注射が必要です。
関節鏡視下手術 | 高位脛骨骨切り術 | 人工関節置換術 | |
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進行度の目安 | 初期~中期 | 中期 | 末期 |
メリット | 傷が小さく体への負担が抑えられる | 自分の関節を残したまま症状が改善できる | 重度の変形でも治療可能 痛みが軽減しスムーズに歩行できる |
デメリット | 再発リスクがある | 長期のリハビリが必要 | 約20年で交換が必要 |
入院期間目安 | 日帰り~3日程度 | 4~5週間程度 | 3~4週間程度 |
手術費用の目安 | 3割:約7.5万円 1割:約2.5万円 | 3割:約45万円 1割:約15万円 | 3割:約60万円 1割:約20万円 |
変形性膝関節症の手術は主に「関節鏡視下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工関節置換術」の3種類です。手術の方法だけでなく手術可能な進行度やメリット・デメリットが異なるため、それぞれの特徴を知っておきましょう。
関節鏡視下手術は、初期~中期の変形性膝関節症に実施されます。膝に小さな穴を開け、内視鏡を使って関節内の毛羽立ったり傷んだ軟骨を取り除くことで、痛みの軽減を図ります。
膝の切開が不要で「傷が小さく体への負担が小さい」「最短日帰り手術も可能」などのメリットがありますが、一時的に症状を緩和させる対症療法の意味合いが強く、近年実施件数は減少傾向です。
手術費用は3割負担で7~8万円程度が目安です。これは日帰り手術の金額で、入院が必要な場合はさらに費用が加算されます。
変形性膝関節症の多くの方は、膝の内側の軟骨がすり減ることでO脚になります。O脚になると体重が膝の内側にかかりやすくなり、さらに軟骨がすり減るという悪循環に陥ります。
高位脛骨骨切り術は、すねの骨の一部を切ってO脚を矯正し、膝内側への負担を軽減する手術です。膝の外側の軟骨が十分に残っている中程度までの変形性膝関節症に対しておこなわれます。比較的活動量の高い方に向いており、手術により登山やジョギングなども楽しめるようになります。
自分の関節を残せるメリットはありますが、骨が接合されるまでには時間が必要で入院やリハビリ期間は長めです。手術費用は入院費用を含め、3割負担で約45万円、1割負担で約15万円程度です。さらに食事代のほか、個室などを使用した場合は差額ベッド代がかかります。
変形性膝関節症の人工関節置換手術費用は膝関節を人工関節に交換する手術で、膝関節全体が傷んでる場合は全体を、内側のみ傷んでいる場合は部分的に置き換えます。
手術やリハビリに耐えられる体力があれば高齢の方でも手術を受けられ、膝関節の傷んだ部分を取り除くことにより痛みがほぼ無くなるのがメリットです。ただし、人工関節の耐用年数は20年程度で、早い段階で手術をおこなうと再置換術が必要になる場合もあります。
入院・手術費用は食事代や差額ベッド代を含まず3割負担で60~80万円、1割負担で20~26万円程度です。
最近では再生医療を提供する膝専門のクリニックも増えています。現在、再生医療の保険適用は一部の疾患に限られており、変形性膝関節症は適用外で治療費は全額自己負担です。しかし「入院が不要」「人工関節を入れるのに抵抗がある方でも治療が受けられる」などメリットも大きいため、新たな選択肢といえるのではないでしょうか。
変形性膝関節症の再生医療は、主に「PRP療法」「APS療法」「培養幹細胞治療費用」の3種類です。それぞれの治療法や費用について見ていきましょう。
PRPとはPlatelet Rich Plasma(多⾎⼩板⾎漿)の略で、患者自身の血液を採取して血小板を濃縮し、治療に利用します。血小板には傷ついた組織を修復する力があり、濃縮したものを患部に注入することで自己修復を促進します。自分の血液を用いるため副作用が少なく、安全性が高い特徴があります。また、採血から治療までが当日中に完結するのもメリットのひとつです。
PRP療法は自由診療のため費用は医療機関により異なり、片膝1回あたり数万~十数万円まで幅があります。治療は3~4週間ごとに3回を1クールとすることが多く、効果は1年程度持続します。
APSはAutologous Protein Solution(自己タンパク溶液)の略で、PRPを特殊な過程で更に濃縮し、治療の邪魔になる成分を取り除いたものです。PRPよりも炎症を抑えたり軟骨を保護するタンパク質を高濃度で含むため、より症状の改善が期待できます。
PRPに比べて不純物が少ないことから、炎症やそれに伴う痛みが少ないのも特徴です。採血から治療までは当日中に完結し、投与後は2週間から3ヵ月程度で一定の効果が期待できます。費用は全額自費で、片膝1回あたり30~40万円程度と高額ですが、1回の投与で1年程度効果が持続するといわれています。
「幹細胞」は人体のあらゆる部位の細胞に分化可能な細胞です。培養幹細胞治療は患者の脂肪組織などから採取した幹細胞を培養し、患部に注入することで、傷んだ組織の修復や軟骨や骨を保護する効果が期待できます。
幹細胞の培養には時間がかかるため、採取から治療までは1~2ヵ月程度かかります。治療後1~3ヵ月程度で一定の効果が期待でき、数ヵ月~数年にわたって持続するといわれています。
費用は全額自費で片膝あたり100万円からと高額です。しかし、入院不要で痛みの改善と組織の修復が期待できることから、手術を避けたい方にとってはひとつの選択肢となるかもしれません。
変形性膝関節症の治療には定期的な通院や手術などの費用がかかります。費用が高額になったときに備えて医療費の負担軽減制度について知っておきましょう。
「高額療養費制度」とは、保険診療で支払った自己負担額がひと月の限度額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。毎月の上限額は加入者の年収や70歳を超えるかどうかにより異なります。
例えば、70歳以上で年収が約370万円~770万円の場合、自己負担額の上限は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」です。ひと月の医療費が100万円だとすると、実際に窓口で支払うのは3割負担で30万円です。30万円のうち自己負担の上限を超えた212,570円は高額療養費として払い戻されるため、実際の自己負担額は87,430円となります。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
医療費は本人の分だけでなく、同じ保健医療制度に加入する同じ世帯の家族の分も合算可能です。また、過去12ヵ月以内に3回以上上限額に達した場合、4回目からは上限額が下がります。
医療費控除とは医療費が家計に与える負担を軽減するための制度で、医療機関に支払った医療費が年間10万円(または総所得金額の5%のいずれか低い金額)を超えた場合、上限200万円まで課税所得額から差し引くことができます。
1月1日から12月31日の間に支払った医療費は、翌年の確定申告で申告することで税金の一部が還付されます。また、本人だけでなく、同一生計の親族の医療費も合わせて申告できます。なお、再生医療などの自由診療は健康保険や高額療養費制度の対象外ですが、医療費控除は対象です。
変形性膝関節症の手術や再生医療を受けるには、まとまった費用が必要です。資金が不足していたり預貯金を残しておきたい場合は、ローンや分割払いも選択肢のひとつです。
医療機関によっては、クレジットカードや提携する信販会社のローンが利用できる場合もあります。クレジットカードは手軽に分割払いできますが、手数料が高めなので注意が必要です。提携ローンは審査が必要なため誰でも利用できるわけではありませんが、医療機関の窓口で申し込めて簡単な手続きで利用できます。
これらの取り扱いがない場合やさらに低金利なローンを選びたい場合は、銀行のローンも利用できます。銀行によっては用途を医療費に限定した医療ローンを取り扱っているほか、使いみちを限定しない「フリーローン」も利用できます。自分自身で銀行を選んで契約する必要はありますが、クレジットカードの分割払いや医療機関の提携ローンに比べると金利は低めです。
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変形性膝関節症は進行度や症状によって適した治療法が変わります。初期に治療を開始すれば温存療法で症状が軽くなることもあるほか、手術の選択肢も広がります。膝に痛みを感じたときは放置せず、まずは信頼できる専門医に相談しましょう。
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中高年の方々にとって、日常の快適さは非常に重要ですが、変形性膝関節症はその質を大きく下げる可能性があります。この記事では、膝の痛みを和らげ、生活の質を維持するための治療オプションを詳しく解説しています。特に、保守的治療から最新の再生医療まで、様々な治療法とそれにかかる費用について具体的に説明しており、読者が知識を深め、適切な医療選択をする手助けとなるでしょう。