2023年07月25日
近年、不妊治療は急速な発展を遂げ、不妊で悩むカップルに新たな可能性が広がっています。現在、約4.4組に1組の割合で受けたことがあると言われている不妊治療ですが、具体的にどのくらいの費用がかかり、どんな治療を受けることができるのでしょう。
今回は、「人工授精」という治療方法にスポットを当て、その治療内容や他の不妊治療法との違い、治療に伴う費用や自治体から受けられる補助について詳しくご紹介します。
目次
不妊治療は、一般不妊治療と生殖補助医療の2つに分類することができます。
一般不妊治療は、不妊検査から始まり、タイミング法や人工授精など、受診者の負担が比較的少ない治療方法です。それに対し生殖補助医療は、体外受精や顕微授精など、高度な技術を要する治療法のことを言います。
一般不妊治療にあたる人工授精は、採取した精子を洗浄濃縮(雑菌や死滅精子を排除)し、女性側の排卵のタイミングに合わせて子宮内に注入する方法です。自然妊娠では子宮手前の膣に精液が入るのに対し、人工授精は子宮に直接注入するので、受精する確率が上がります。精子数が少ない、元気がない、精⼦と頚管粘液の相性が良くない、などの不妊原因が考えられる場合に効果的で、タイミング療法にて妊娠に至らない場合などにも次のステップとして行われることがあります。
精子を子宮内に注入するまでが人工で、その後の卵子と精子の出会いから受精、着床、妊娠に至るまでは自然の経過によるものです。施術時の痛みは殆ど無く、施術時間は注入後の休憩も含めて10分から15分程度と短いので、女性の身体への負担が少なく、費用も抑えることができます。
人工授精による妊娠率は、1回あたり約5〜10%と言われています。不妊治療患者のタイミング療法による1回の妊娠率が約3〜5%であることを考えると、決して高い成功率ではありません。また、回を重ねる毎に累積妊娠率は横ばいに近づくため、3〜4回施術して妊娠しない場合は次のステップを検討する必要があります。
妊娠率を高めるために排卵誘発剤を併用する場合、双子や三つ子などの多胎率が高くなります。また、副作用で卵巣の腫れや腹水が起こり、下腹部の張りや吐き気、胃の痛みなどを感じたり、稀に血栓症や呼吸障害を起こすことがありますので注意が必要です。
人工授精1回の妊娠率は約5〜10%と決して高くはなく、繰り返しおこなう必要があります。しかし、人工授精によって妊娠した人の殆どは3〜4回で妊娠していることから、5〜6回施術して妊娠に至らなかった場合は体外受精などの次のステップを勧められることが多いようです。
体外受精の妊娠成功率は、年齢によって違いがありますが、おおよそ20%程度と、人工授精と比較して高くなっています。
これまで、人工授精や体外受精などは全額自己負担であり、かかった費用に対し特定不妊治療助成制度を利用して助成金をもらう、という流れが一般的でした。
2022年4月に不妊治療への保険適用が拡大され、現在は経済的な負担が大幅に軽減されています。これにより、高額な治療費が理由で治療を諦めていた方々も治療を受けることができるようになりました。
体外受精、顕微授精の保険適用には年齢や回数に上限がありますが、人工授精に関しては限度なく適用されます。人工授精の施術に関わる薬剤や検査は種類や回数に制限がありますが、決められた範囲内であれば保険が適用されます。
人工授精治療を自費で受ける場合、1回に5万円程度と高額な治療費がかかっていましたが、保険適用であればおおよそ以下の値段で治療を受けることができます。
一般不妊管理料 | 750円 |
---|---|
診察、検査、薬代 | 約9,500円 |
人工授精1回 | 5,460円 |
合計 | 約1万5,710円 |
検査内容や使用する薬の種類、治療の回数によって費用が変わりますので、詳細はかかりつけのクリニックに確認しましょう。
人工授精と体外受精には、体内で受精するか体外で受精するかの違いがあります。人工授精は、採取した精子を子宮内に直接注入し、体内で自然に受精、着床するのを待ちます。対して体外受精は、排卵直前の卵子と精子を採取して培養液の中で受精させた後、順調に発育した良好な胚を選んで子宮内に戻します。どちらも、精子の力で自然に受精します。
一方顕微授精は、人工的に精子を卵子に注入することで受精します。排卵直前の卵子を採取し、顕微鏡で拡大しながら専用の針で精子を注入して受精を促します。
2022年4月より、人工授精や体外受精、顕微授精が保険適用となり、原則3割負担で治療を受けられるようになりました。人工授精は特に上限なく保険適用で治療を受け続けることができますが、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療に関しては、表の通り年齢や回数に制限があります。年齢や回数の制限を超えて治療を受ける場合は、全額自己負担となります。
保険適用後、人工授精や体外受精、顕微授精のそれぞれ1回にかかる費用はおおむね以下の通りです。人工授精の費用には薬や検査の費用は含まれていません。体外受精や顕微授精は、使用する排卵誘発剤の種類や採卵数、受精した個数、凍結保存の有無などによって金額が大きく変わります。
保険適用後の費用 | |
---|---|
人工授精 | 5,460円 |
体外受精 | 6.5~20万円程度 |
顕微授精 | 25~40万円程度 |
人工授精は、自然に近い形での妊娠が期待できる治療法ですが、妊娠率は決して高いとは言えません。では、人工授精による妊娠率を上げるには、どのような点に注意して生活し、治療を進めれば良いのでしょうか。
適度な運動やバランスの良い食事、質の良い睡眠をとり、心身ともに健康な状態で施術日当日を迎えることが大切です。検査で事前に施術日が決められますので、ストレスにより精子の状態が悪化したり、睡眠不足が原因でホルモンバランスを崩すようなことがないよう、夫婦で体調を整え、ストレスを溜めない生活を心がけましょう。
また、冷えも妊娠の確率を下げる原因となります。湯舟に浸かる入浴や適度な運動を生活に取り入れてみましょう。
人工授精には、自然周期で行う方法と、排卵誘発剤を使用した卵巣刺激周期で行う方法があります。排卵誘発剤は、排卵障害がある方への治療や、より妊娠の確率を高めるために使用します。超音波検査により卵子の数や発育の様子、内膜の厚みなどを確認して施術日を決定しますが、より確実に排卵日をコントロールするために薬剤を使用することもあります。
不妊治療に使用する薬は多数ありますので、効果や副作用を確認しながら使用する薬剤の選択肢を広げ、自分の症状にあった薬を見つけることが有効です。
不妊治療は、人によっては長い時間と高額な費用がかかってしまうことがあります。体への負担を最小限に抑えつつ、できるだけ効率よく行うことが大切です。
体外受精は、人工授精に比べて高額な費用がかかるうえ体への負担も少なくありません。しかし、人工授精は6回目以降の妊娠成功率が非常に低く、より妊娠率の高い体外受精へステップアップすることが負担の軽減に繋がることもあります。原因不明不妊の場合、体外受精を行うことで不妊の原因が特定できる場合もあり、若く妊娠率の高いうちに体外受精に切り替えることで、逆に費用が安く抑えられる可能性もあります。
2022年4月より人工授精や体外受精、顕微授精に保険が適用されることになり、原則3割負担で受診することができるようになりました。とは言っても、生殖補助医療への移行や長期化により大きな負担を強いられる可能性もあります。不妊治療を続けるには、どんな助成制度があるのかを調べておくことも大切です。
本人と、生計を共にする家族が1年間に支払った医療費の合計が一定金額を超えた場合、確定申告をすることで所得税、住民税が減税されます。年収が200万円以上の方は、実際に支払った医療費(支払った医療費から保健などで補填される金額を差し引いた金額)が10万円以上の場合、年収が200万円未満の方は、実際に支払った医療費が総所得金額の5%を超えた場合、医療費控除が適用されます。
病院に支払った診療費や治療費、医師の処方箋で購入した医薬品代、通院費(公共交通機関)などが医療費の対象となります。市販で購入した妊娠検査薬や排卵検査薬などは医療費控除の対象にはなりません。
民間の保険の中には、不妊治療による入院が入院給付金の対象になるなど、不妊治療に対する補償があるものがあります。また、2022年4月に一部不妊治療が保険適用されたことで支払い対象が拡大し、不妊治療手術が手術給付金の対象になる可能性もあります。
不妊治療自体は補償の対象にはなりませんが、不妊治療中に発生するその他の病気を保証してくれる、という保険もあります。
給付条件や給付される上限回数などは保険会社や契約内容によって異なりますので、保険約款の確認が必要です。また、不妊治療に対する保障は契約後一定期間は受けられない、とする保険会社もありますので、医療保険で不妊治療に備えるならば早めの検討が必要です。
同じ健康保険に加入している家族の、1ヶ月間にかかった医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合、高額療養費制度を利用することができます。高額療養費制度とは、年齢や所得によって定められた自己負担限度額があり、それを超えた医療費負担が払い戻される制度です。直近の12ヶ月の間に3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、4回目から負担限度額がさらに引き下がります。
高額医療制度の払い戻しは診療月から3ヶ月ほどもかかってしまうことがあります。病院での支払いが不安な方は、事前に限度額適用認定証の交付を受けることで、支払額を自己負担限度額までに留めることができます。限度額適用認定証は、各健康保険組合へ申請して交付してもらいます。
高額医療費制度の対象は、保険適用される診療に限られています。自由診療や先進医療は高額医療費制度の対象にはならないので注意が必要です。また、1ヶ月に1医療機関への支払いが21,000円以上の医療費のみが合算対象です。
人工授精や体外受精、顕微授精は、2022年4月より保険適用になっていますので、1ヶ月の支払いが21,000円を超える場合は高額医療費制度を利用することができます。
<70歳未満の高額療養費制度>
(ア)上位所得者 (健保:月収83万円以上、国保:所得901万円超)
(イ)上位所得者 (健保:月収53万〜79万円、国保:所得600万〜901万円)
(ウ)一般所得者 (健保:月収28万〜50万円、国保:所得210万〜600万円)
(エ)一般所得者 (健保:月収26万円以下、国保:所得210万円以下)
(オ)住民税非課税世帯
所得区分 | 1ヶ月の自己負担限度額 | 4回目以降 |
---|---|---|
(ア)上位所得者 | 25万2600円+(医療費−84万2000円)×1% | 14万100円 |
(イ)上位所得者 | 16万7400円+(医療費−55万8000円)×1% | 9万3000円 |
(ウ)一般所得者 | 8万100円+(医療費−26万7000円)×1% | 4万4400円 |
(エ)一般所得者 | 5万7600円 | 4万4400円 |
(オ)住民税非課税世帯 | 3万5400円 | 2万4600円 |
繰り返し続く終わりの見えない治療は、精神的にも金銭的にも大きな負担となります。年齢が上がるにつれ妊娠率が低くなることを考えると、長引けば長引くほど負担は増え、妊娠の確率が下がることが考えられます。
体外受精は高額な費用が掛かるため、なかなかステップアップに踏み切れないという方も多いかと思いますが、早いうちに妊娠率の高い体外受精にステップアップすることで、結果的に負担が軽く済むという可能性もあります。
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不妊の原因や治療法は人によって様々です。それに伴い、必要な治療や薬、かかる費用も変わってきます。タイミング療法から始める方もいれば、体外受精から始めたほうが効率的な方もいます。自分の体のことから費用のことまで不安を感じることが多いと思いますが、かかりつけの医師と相談し、パートナーと2人でしっかりと納得したうえで治療を進めることが大切です。
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不妊治療はカップルにとって負担が大きいものですが、人工授精は費用や負担が比較的少ない方法の一つです。施術は短時間で痛みも少なく、保険適用により費用も軽減されます。ただし、成功率は高くありません。妊娠率を上げるためには、体調管理や薬剤選択などに注意が必要です。また、治療費用の捻出に困る場合は、専用のローンを活用することも検討しましょう。不妊治療は個々の状況に合わせて進めるべきですので、かかりつけ医師との相談が大切です。