不妊治療の健康保険適用範囲が広がり、費用面で治療に踏み切れなかった方もチャレンジしやすくなりました。しかし、体外受精などの高度な治療は、保険が適用されても高額です。1度で結果が出ない場合は複数回治療を受けることになり、さらに金額はかさみます。
そこで今回は、
不妊治療の保険適用範囲や治療の進め方、治療ごとの金額を解説。不妊治療に使えるローンの種類や、費用を抑える制度やサービスについても紹介しますので、費用面での負担軽減にお役立てください。
この記事を監修する専門家
有限会社ライフドアーズ ファイナンシャルプランナー
谷間 志帆(タニマ シホ)
AFP(日本FP協会) 2級FP技能士(国家資格) 証券外務員資格1種(株式、債券、投資信託販売資格) DCマイスター(DCマイスター協会) 住宅ローンアドバイザー 相続知財鑑定士(相続知財鑑定士協会)
北海道出身。前職は国内生命保険会社勤務。
札幌を中心に各地で生命保険の基礎知識やマネープランの基礎知識をベースとしたマネーセミナーの講師を務める他、資産運用・保険相談などのコンサルティングを行なっている。
『理想のライフプランを実現するために、知っておくべきお金の知識をわかりやすくお伝えします。お気軽にご相談ください!』
2022年度から不妊治療は保険適用に!
これまで保険適用となる不妊治療は、
不妊の原因の検査や原因疾患の治療とタイミング法のみに限られていました。しかし、
2022年4月からは健康保険の適用範囲が広がり、体外受精などの高度な不妊治療についても原則3割負担で受けられるようになりました。
保険適用となった不妊治療
不妊治療には段階があり、治療が高度になるにしたがって金額も高くなります。まずは、一般的な不妊治療の流れについて確認しておきましょう。
不妊治療の流れ
不妊の原因は人により異なるため、まずは診察や検査を受けます。検査で原因となる疾患が見つかった場合は、薬物治療や手術により原因を治療したうえで不妊治療へと進みます。
不妊治療にはタイミング法、人工授精、体外受精などがあり、段階的にステップアップしていくのが一般的です。ただし、検査結果や不妊治療開始時の年齢によっては、体外受精や顕微鏡受精などの高度な不妊治療から始める場合もあります。
保険適用には年齢や回数の制限がある
不妊治療は健康保険が適用となりましたが、
無制限で利用できるわけではありません。体外受精と顕微授精については、上の表のとおり治療開始時の年齢や1子あたりの回数に制限が設けられています。
このため、年齢や回数が保険適用外となった方が体外受精などの治療を受けるには、費用を全額自費で支払う必要があります。
保険適用で不妊治療の金額はいくらになった?
不妊治療は保険適用により原則3割負担となりましたが、具体的な金額はどの程度なのでしょうか。人工授精と体外受精の1回あたりの一般的な費用は次の通りです。
|
自費診療 |
保険適用 |
人工授精 |
3万円程度 |
5,460円 |
体外受精 |
20~50万円程度 |
6.5~20万円程度 |
体外受精の金額に差があるのは採卵個数や受精卵の凍結保存の有無などにより価格が変わるためで、多くの場合は上限に近い費用がかかります。
また、治療は1回で終わるとは限らず、回数を重ねるごとに費用はかさみます。例えば40歳未満で不妊治療を始めた方が保険適用の上限まで治療を受けると、100万円近い自己負担がかかる場合もあります。
保険適用になったことで助成金は廃止に
不妊治療が保険適用になる前は、体外受精や顕微受精に対して1回あたり30万円の給付金が支給されていました。
現在は保険適用となったため、従来の助成金は廃止されています。
助成金は後払いのため、治療費をいったん全額自己負担する必要がありました。保険適用後は窓口負担が減ったことで、まとまった金額を用意するのが難しい方でも治療を受けやすくなりました。
ただし、給付金が一律30万円だったのに対し保険でカバーされるのは7割のため、治療の内容によっては自己負担が増える場合もあります。例えば40万円の治療を受けた場合、次の表のように保険適用のほうが負担が大きくなります。
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助成金の給付 |
保険適用 |
窓口での支払額 |
40万円 |
12万円 |
実質負担額 |
10万円 |
12万円 |
不妊治療に使えるローンはある?
不妊治療が保険適用になったとはいえ、まとまった費用は必要です。さらに、出産にはタイムリミットがあるため、お金を貯めてからの治療では、思うように効果が得られないことも。
すぐに費用を捻出するのが難しいときは、ローンを使うのもひとつの手です。
不妊治療に使えるローンには、銀行や信用金庫などが提供する「銀行系ローン」と信販会社が提供する「信販系ローン」があり、それぞれ次のような特徴があります。
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銀行系ローン |
信販系ローン |
金利 |
2.0~14.0%程度 |
3.8~15.0%程度 |
審査 |
厳しい |
比較的通りやすい |
借入までにかかる期間 |
数日~2週間 |
最短当日 |
不妊治療に使える銀行系ローンは3種類
不妊治療の成功後には出産・教育資金などが必要となるため、ローンを利用する場合はできるだけ低金利のプランを選びましょう。銀行系ローンは信販系ローンより金利が低めなので、まずは銀行系ローンを検討するのがおすすめです。
不妊治療で利用できる銀行系ローンは3種類あります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
不妊治療・妊活専用ローンがある銀行も
数は少ないですが、不妊治療や妊活に特化したローンを取り扱っている銀行もあります。
多くの場合カードローンタイプで、契約時に設定した限度額までは必要なときに必要な金額だけ融資を受けられます。プランの内容は銀行ごとに異なりますが、不妊治療の治療に使いやすい設計になっています。
例えば、「スルガ銀行」の「不妊治療サポートプラン」は不妊治療の費用だけでなく、将来の妊娠に備えて未受精卵の凍結費用(採卵、凍結、保管)にも利用できます。また、最長2年間の据置期間を設定でき、治療期間中の返済を金利のみに抑えられます。
「池田泉州銀行」の「妊活・育活応援ローン」は不妊治療だけでなく出産費用や託児費用など産前産後にかかる費用に幅広く対応しています。また、出産お祝いプレゼントがあるのも特徴です。
<不妊治療・妊活専用ローンの例>
銀行名 |
商品名 |
金利 |
借入可能額 |
返済期間 |
スルガ銀行 |
不妊治療サポートプラン |
4.0~7.0%(変動金利) |
最大1,000万円 |
10年以内 |
池田泉州銀行 |
妊活・育活応援ローン |
3.975%(変動金利) |
最大300万円 |
10年以内 |
※2022年8月現在
医療ローン(メディカルローン)も不妊治療に使える
医療ローン(メディカルローン)は、入院・手術のほか、歯科治療や介護施設入居費用など医療に関するさまざまな費用に対応したローンです。不妊治療や妊活の専用ローンに比べると、取り扱う銀行数は多いです。
ただし、不妊治療がうまくいかず追加で融資が必要となった場合、前回分の返済が終わっていないと新たに借り入れできないこともあるため注意が必要です。
<医療ローンの例>
銀行名 |
商品名 |
金利 |
借入可能額 |
返済期間 |
中国銀行 |
医療向けローン |
2.875%(変動金利) |
最大500万円 |
10年以内 |
福岡銀行 |
メディカルローン |
6.0%(固定金利) |
最大300万円 |
7年以内 |
※2022年8月現在
取り扱いの多さならフリーローン
用途を限定しないフリーローンも不妊治療に利用できます。医療ローンのように使途を限定した「目的別ローン」と比べると金利は高めなものの、取り扱う銀行が多く、たくさんのプランの中から選べるメリットがあります。
銀行によっては低金利で借りられる場合もあるため、ローンを探す際はフリーローンも合わせて検討してみましょう。
不妊治療にローンを使う注意点
不妊治療を受けて子どもを授かると、その先は出産や子育て・教育などさらにお金がかかります。子どもが生まれた後に家計に無理が生じないよう、しっかり返済計画を立てて利用しましょう。
また、治療や妊娠により体調を崩すこともあります。特に共働き夫婦の場合は、収入が減る可能性も考慮しておきましょう。
さらに、ローンを利用するには審査を通過する必要があります。このため、転職したばかりで収入が安定しているといえない方や、他社に複数の借り入れがある方、過去に金融事故を起こしたことがある方などはローンを利用できない可能性があります。
不妊治療の費用負担を軽くできる制度やサービス
不妊治療が健康保険の適用となったことで助成金は廃止となりましたが、それ以外にも費用負担を抑えられる制度やサービスがあります。余裕をもって不妊治療を受けるため、利用できる制度はしっかり活用しましょう。
高額療養制度を活用すれば窓口での負担も軽くなる
「高額療養制度」とは、病院などへの支払いが高額となった場合に自己負担限度額を超えた額が払い戻される制度で、限度額は次の表の通り所得により異なります。
<70歳未満の高額療養費制度>
- (ア)上位所得者 (健保:月収83万円以上、国保:所得901万円超)
- (イ)上位所得者 (健保:月収53万〜79万円、国保:所得600万〜901万円)
- (ウ)一般所得者 (健保:月収28万〜50万円、国保:所得210万〜600万円)
- (エ)一般所得者 (健保:月収26万円以下、国保:所得210万円以下)
- (オ)住民税非課税世帯
所得区分 |
1ヶ月の自己負担限度額 |
4回目以降 |
(ア)上位所得者 |
25万2600円+(医療費−84万2000円)×1% |
14万100円 |
(イ)上位所得者 |
16万7400円+(医療費−55万8000円)×1% |
9万3000円 |
(ウ)一般所得者 |
8万100円+(医療費−26万7000円)×1% |
4万4400円 |
(エ)一般所得者 |
5万7600円 |
4万4400円 |
(オ)住民税非課税世帯 |
3万5400円 |
2万4600円 |
例えば、上の表の(ウ)に該当する方の1ヵ月の治療費が50万円となった場合、自己負担限度額(80,100円+(500,000円-267,000円)×1%=82,430円)を超えた67,570円があとから払い戻されます。
ただし、高額療養制度の払い戻しは受診から3ヵ月程度かかります。あとから戻ってくるとはいっても一時的に大きな負担となるため、
医療費が高額になりそうなときは「限度額適用認定」の利用がおすすめです。
国民健康保険は市役所などの国民健康保険係の窓口、協会けんぽ、組合健保などの被用者保険は保険の所属支部に申請すると「限度額適用認定証」が交付されます。病院の窓口に限度額適用認定証を保険証と合わせて提示すれば、窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。
医療費控除で税金が戻ってくる
「医療費控除」とは課税対象となる所得から医療費を差し引くことができる制度で、
1年間にかかった医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超えた場合に利用できます。確定申告により還付金を受け取れるほか、翌年の住民税も安くなります。
医療費は本人だけでなく家族(同一家計であれば別居でも可)の分も合算できます。不妊治療以外にかかった医療費の領収書も必ず保管しておき、10万円を超えた場合は忘れずに医療費控除をおこないましょう。
なお、不妊治療のうち医療費控除の対象となるのは次の項目です。
- 人工授精・体外受精・顕微受精の費用
- 医薬品・漢方薬代
- 採卵消耗品代
- 卵子凍結保存料・保管料
- マッサージ指圧師・鍼師・柔道整復師の施術費
- 通院のための交通費
- 医師の紹介料
医療保険で給付金がもらえることも
民間の医療保険には、不妊治療も給付の対象となるものもあります。加入している医療保険があれば、内容を確認してみましょう。なお、給付の対象となるのは加入から一定期間(一般的には2年程度)経過したあとです。
すぐに不妊治療を受けたい方が新規で加入しても給付は受けられないためご注意ください。
会社の制度も確認してみよう!
産休・育休の拡充や相談窓口を設置するなど独自の子育て支援をおこなう企業が増えています。不妊治療についても独自の給付金があったり、低金利または無利息で治療費を貸している企業もあるため、社内の担当者に利用できる制度がないか確認してみましょう。
不妊治療に使えるローン探しならクラウドローンにおまかせ
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不妊治療を諦めないためにローンや制度を賢く使おう
体外受精や顕微授精などの高度な不妊治療も保険適用となりましたが、それでもまとまった金額が必要です。しかし、お金を貯めてから治療を受けようと思っていると、妊娠できるタイミングを逃してしまうことにもなりかねなません。
不妊治療に使える制度を活用するのはもちろん、すぐに資金を用意するのが難しい場合はローンの利用も検討してみてはいかがでしょうか。
「どの銀行が融資をしてくれるか分からない」をクラウドローンが解決
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不妊治療の健康保険適用が拡大され、多くのカップルにとって治療が手が届きやすくなりました。特に高額な体外受精などの高度治療も含めて、保険が適用されるようになったことで、費用の負担が大幅に軽減されています。本記事では、新しい保険適用範囲、治療の流れ、及び必要な費用について詳しく解説しています。また、治療費用を効果的に管理するためのローンの種類や、費用削減のための制度も紹介しているため、不妊治療を考えている方々にとって非常に有益なガイドとなるでしょう。